これは、既存と新規との間に生じる “ずれ” を手掛かりに再構築した、ある家族のための戸建住宅リノベーションである。
夫婦と子供の住むこの住宅は、まだ田畑がまばらに残り、穏やかな空気の流れる郊外に位置している。
1階は、モルタルのボックスの中に入った寝室、子供部屋、収納があり、バス洗面、書斎と一緒に回廊で繋がれている。2階は大きな一室になっており、ボックスの上にキッチン、ダイニングが置かれ、それらを切り欠いた既存の床レベルが囲んでいる。
この住宅では、既存の2階の床レベルを敢えて残しながら、新たにボックスを高さ違いで挿入する事で、内部空間に“ずれ”として大きな隙間を作り、1階と2階を緩やかに繋いでいる。その新旧の空間のずれの中で、既存の開口窓は、大きさや位置を維持したまま、心地よいリズムを生み出している。
2階は、光にあふれ、開放的な空間となっている。既存の2階の床レベルは、縁側のようでもあり、幅を変化させながら続くその場所は、座ったり、寝転んだり、遊び場になったり、物を飾ったりと、その時々でさまざまな姿を見せる。それらがボックス上を囲う事で、家の中に“中心”を形作り、団欒の場が広がるようになっている。1階は、箱の外と中を通して明と暗の空間を作り出しており、2階へと抜けた明るさと、天井が低くこもった暗がりとを日々の中で回遊することで、メリハリある生活を送る事ができる。
今回、2階を大きく一体的な空間とするために、大きな梁フレームと4本の柱で屋根を支え、既存の外壁部分の構造耐力を強化している。経年により変化した木質フレームと新規のフレームとが仕口の金物を通して噛み合い、硬質な印象を持つモルタル面と直交する事で、それぞれの素材の“差異”が強調されている。
新旧の要素が交じり合いながら再構築されたこの家は、既存住居では見ることのかなわなかった風景を、新たな構成の下、様々に切り取っている。大きく大胆に改変したことにより、リノベーション行為ならではの楽しさが住宅全体で表現され、おおらかさのある空間となった。
Client/ a family
Location/ Yachiyo-city, Chiba
Site area/ 217.08sqm
Built area/ 133.98sqm
Completion date/ Nov 2014
Structure/ Wood flame, 2 story
Structure engineer/ Tatsumi Terado
Contractor/ Hirohashi Komuten
Photographer/ Soichiro Nakamura
Staff/ Tomomi Hara
クライアント/ 夫婦+子ども一人
場所/ 千葉県八千代市
敷地面積/ 217.08㎡
延床面積/ 133.98㎡
完成時期/ 2014.11
構造規模/ 木造2階建て
構造設計/ 寺戸巽海
施工会社/ 広橋工務店
撮影/ 中村総一朗
担当/ 原友望美