精度と質感

こんにちは、増田です。

今年も1年の半分が終わりました。
少しづつ夏らしさが増しつつも、まだまだ梅雨が明ける気配はなさそうです。
ただ私は雨が好きなので、しばらくはこのままでもいいかな、と思っています。

雨の日の唯一の悩みは湿気です。
これによって、髪の毛と事務所の模型がうねりだします。
精度よく作られた模型達も素材は紙なので、反ったり剥がれたり、一溜まりもありません。

模型の精度が落ちると、そこから受ける質感の印象も随分と変わります。

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認知心理学では、人がある物質Aを見て「これはAだ」と知覚する時、そのヒントになるのは、
その物質のもつ肌理なのだといいます。
例えば本物の花と造花を見分ける時、微妙なツヤや凸凹や厚みを手掛かりに本物を判断しています。

建築にも、本物の石を使った壁材があれば、石を模した極薄のシートがあったりします。
正面から見ると同じに見えても、横から見るとその薄さが分かり、そこで初めて「シートだ」と知覚します。
土壁調の壁紙も、少し角がペロッと剥がれているだけで「土ではない」「薄い」という感覚を得ますよね。

この原理は、建築模型も同じです。
接合・ノリ付け・水平垂直が徹底して綺麗に作られた模型は、覗き込んでみると
「これは模型だ」という感覚を超越して、本当に建築の中に入ったような気分になります。

接合部に隙間があったり、壁紙がちょっと剥がれたり、糊がはみ出ていたりすると、
「紙だ」「ノリだ」と、一気に模型っぽさが出てきてしまいます。

製作の精度によって、紙が紙以上の質感を獲得する。

普段模型を綺麗に作ろうと努力するのは、お施主様への誠意の表しと同時に、
模型がどこまで実際の建築に近づけるか、通常の質感がどこまで異質になれるか、
ということへの挑戦でもあるような気がします。

増田

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