素材と空気感

こんにちは。増田です。

最近は通常の設計活動の傍ら、
4月に開催の世界最大の国際家具展覧会「ミラノサローネ」でのインスタレーションのために、
慌ただしく動いております。

つい先日、その制作をお願いしている「広松木工」さんの工場へ1週間ほど出張へ行きました。

福岡県の大川という町にある家具屋さんなのですが、
スッとした美しい佇まいの中に、どこか懐かしさや愛らしさをもった家具を作っています。
今回の展示はまさに、その繊細な技術や圧倒的な木の知識、家具への愛、すべてを頂いて出来ています。

東京生まれ・東京育ち・事務所一沈黙の多い自分が、血気盛んな九州へ出張なんてと思いましたが、
福岡生まれの人というのはとても大らかで、毎日工場を見学させてもらったり、
毎晩尋常ではない量の美味しいご飯とお酒をご馳走になって、とても充実していました。

1-IMG_3863のコピー

面白かったのは、毎日違う人と話すのに、皆同じ事を話すことでした。
中でも印象的だったのは「家具から建築を作ってみたい」ということ。

建築は家具を納めるための箱ではないことを、
家具は家具だけでは成立しないことを、強く意識させられたような気がします。
そして単にレイアウトの話でなく、素材まで遡る話のように思いました。

「木を(自然素材を)使う=ぬくもりがあってやさしい」
もはや無批判に直結してしまうぐらい自然なイメージですが、これは本当にそうなのでしょうか。
木を使えばなんとでもなるのか。いやきっとそうではない筈で。

私は、素材そのものが暖かさや懐かしさを帯びていたり詩的であるわけではないと時々思います。
その点で、広松木工さんの家具に感銘を受けるのは、
やはり素材が的確かつ感覚的に用いられているからです。

ある特定の状況の中で、
その構成でしか、そのように用いることでしか作れない状況に特定の素材が置かれた時、
素材は初めて特別で詩的な意味を放ち輝き始めるのだ、と教えられている気がします。

家具の素材、素材と素材の接合部、家具の構成、家具と壁の関係、壁の素材、壁と床と天井の接合、
部屋と部屋の構成、建築全体の構成、建築が置かれる敷地環境。
すべての細部が全体の中で意味の繋がりを持った時、そこには「家具と建築」という呼び分けは不要かもしれません。

そんな緊張関係をもった状況をつくるには、まだまだ経験が足りないなと思う福岡の酔いの夜でした。

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